勤怠管理コラム

年次有給休暇とは?付与日数や取得時期、繰越条件を徹底解説!

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目次

年次有給休暇の管理は適切にできていますか?
年次有給休暇の付与は、タイミングや付与日数が従業員ごとに異なるため、管理が煩雑になりがちです。また従業員によっては5日の取得義務があり、年次有給休暇管理簿の作成と保管が義務付けられています。年次有給休暇は労働者にとって非常に大切な権利であり、正しく管理をしていないと未払い賃金の原因にもなりえます。
今回は年次有給休暇管理の付与について、基礎知識と実務のポイントを詳しく解説していきます。

年次有給休暇とは?

年次有給休暇は労働者の権利

年次有給休暇は労働基準法によって労働者に保障されている権利であり、定められた要件を満たした全ての労働者が取得をすることができます。全ての労働者に保障されているので、パートやアルバイトの労働者も、もちろん年次有給休暇を取得することが可能です。

年次有給休暇の制度は、労働者の心身の健康を維持し、労働生産性を向上させることが目的となっており、労働者の過労やストレスが軽減できれば、結果的に企業の生産性向上にもつながります。企業と労働者の双方がこの権利を理解し、適切に運用することが重要です。

有給付与日数が10日以上の従業員は年5日の取得義務がある

2019年4月から労働基準法の改正により、1年間に10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、使用者は年5日間の有給休暇を必ず取得させなければいけなくなりました近年の働き方改革の流れに法改正も相まって、日本の次有給休暇の取得率は上昇しており、2023年の厚生労働省の調査では初めて6割を超えました。しかしながら、令和7年までに年休の取得率を7割とすることが、政府の目標に掲げられているため、年次有給休暇の取得促進の社会的な流れは益々強くなり、これまで以上に厳密な管理が求められてくると予想されます。

年次有給休暇を取得するための要件

初回は雇入れ日から6か月以上の継続勤務し、その間の出勤率が8割以上

年次有給休暇を取得するための最初の要件として、まず雇入れ日から6か月以上の継続勤務が必要となります。継続勤務とは在籍期間を意味し、試用期間や休職期間も含めて6ヵ月継続して勤務していることが条件になります

次に、出勤率が8割以上であることも取得の条件となっています。出勤率とは、労働者が実際に出勤した日数の割合を指し、これが所定労働日の8割以上である必要があります。無断欠勤や私用での欠勤は出勤率に影響を与えるため、注意が必要です。

初回以降は、1年ごとに出勤率が8割以上

初回以降は付与日から1年ごとに出勤率が8割以上あれば権利が発生します。出勤率は、初回の付与日から次の付与日の前日までの期間で集計をします。

出勤率の計算については、次に詳しく説明しますが、産前産後休業や育児休業などのように計算にあたっては出勤したものとして取り扱い日があるため、企業側が集計を誤らないことは当然ですが、従業員の方が誤解をしないように周知をすることも大切です。

出勤率の計算方法

次に出勤率について詳しく説明をします。出勤率は以下のように計算をします。

出勤率=算定期間の出勤した日の合計/算定期間の全労働日
*出勤日数には、休日出勤した日は除き、遅刻・早退した日は含める

全労働日は、所定労働日のことですので、所定休日に出勤した場合などは全労働日には含まれません。
また全労働日から除外される日、出勤日したものとして取り扱う日がそれぞれ示されており、この集計を誤ると正しい付与ができなくなるので、注意が必要です。

全労働日から除外される日数、出勤したものと取り扱う日数


下記のカレンダーで出勤率の集計について具体的に説明をします。

全労働日は所定労働日ですので、22日です。
出勤日は出勤した日と有給休暇を取得した日となるので、20日です。
所定休日、法定休日に出勤をした日は、全労働日と出勤日のどちらにも含めません。
この月の出勤率は20日÷22日=91%となります。

上記の集計を付与日を基準に1年間(初回は入社日から半年)で行います。

年次有給休暇の付与日数

年次有給休暇の付与日数は、勤続年数によって異なります。初回の付与は雇入れから6か月が経過した日から10日間を取得できます。その後以下のように1年ごとに取得可能な日数は増えていき、最大20日間の取得可能になります。

年次有給休暇の付与日数



所定労働日数が少ない場合は比例付与も可能

パートタイムやアルバイトなどで所定労働日数が少ない場合、付与される有給休暇の日数は所定労働日数に応じて以下のように比例付与とすることができます







出勤率が8割未満だった場合の付与日数

出勤率が8割未満だった場合、その年は有給取得の権利は発生しないため付与日数は0日となります。その翌年の出勤率が8割以上であれば、その時点の継続勤務年数の日数が取得可能です。

例えばフルタイムの労働者の場合、1年6か月目に出勤率が8割未満となり権利が発生しなくとも、2年6か月目に出勤率が8割以上であれば、12日間が取得可能となります。1年6か月目の付与日数である11日とはならないので気を付けてください。

年次有給休暇が付与されるタイミング

雇入れから6か月が経過した日を有給付与の基準日とする場合

初回の有給付与がされる雇入れから6か月が経過した日が基準日となります。4月1日に入社をした場合は、基準日は10月1日となります。入社日をベースとするため、月途中での入社の場合は基準日も月途中となり、入社時期が一定ではない会社の場合、従業員ごとに基準日が異なるため、管理が煩雑となりがちです。

有給付与の基準日を統一する場合

年次有給休暇の基準日を労働者の雇入れ日に関係なく統一的に定めることもできます。付与にあたっては労働者不利にならないようにしなければいけない点に注意が必要です。

例えば基準日を4月1日で統一している会社で、6月1日に入社をした従業員の場合、次の4月1日に付与をしてしまうと雇入れ日から6か月以上が経過しており、法定の付与よりも遅く付与されていることになり、適法とはなりません。入社日(6月1日)から6か月が経過した12月1日に初回の10日を付与し、次の4月1日には2回目の付与として11日を前倒して付与するなど、法定の付与日・付与日数を下回らないようにしなければいけません。

基準日を統一することで管理がシンプルとなりますが、入社日によって社員間で公平性に欠けるというデメリットもあります。

年次有給休暇の利用にあたっての注意

年次有給休暇の権利行使は2年まで

労働基準法では、年次有給休暇の請求権の時効は2年とされています。そのため、付与日を基準に2年が経過した時点でまだ取得をしていない有給休暇は取得ができなくなります。

例えば2022年10月1日に10日間の有給休暇が付与された場合、この10日分の有給休暇の消滅時効は2024年9月30日となります。消滅時効までに取得をしていなかった分は2024年10月1日以降は取得することができなくなります。

時間単位年休を活用する

有給休暇は1日単位での取得が原則となっていますが、就業規則への記載と労使協定の締結により、年5日の範囲内で、時間単位での取得が可能となります。注意しなければいけないのは、時間単位年休の取得分については、冒頭で説明をした年5日の有給の取得義務の日数から差し引くことはできません。

例えば、ある社員が年間10日の有給休暇を持ち、月に2時間ずつ時間単位で有給休暇を取得して、年間で合計40時間(5日分)取得するとします。この時間単位で取得した有給休暇は、法律で定められた年5日の有給休暇取得義務にカウントはされません。

年次有給休暇の取得の理由は必須ではない

年次有給休暇は原則として、「労働者が請求する時季」に与なければならず、年次有給休暇をどのように利用するかは労働者の自由です。そのため、具体的な取得理由の記載がないことを理由に休暇を認めないということはできませんましてや有給休暇を取得したことを理由に、賃金の減額など休暇の取得を抑制する不利益な取扱いなどは絶対にしてはいけません。

事業の運営に支障をきたす場合の時季変更

先ほど年次有給休暇は「労働者が請求する時季」に取得させなければならないと説明をしましたが、従業員から請求された時季に有給を与えることが「事業の正常な運営を妨げると具体的・客観的に判断される場合」は、例外的に使用者は従業員に対して有給取得の時季を変更することができますこれを「時季変更権」と呼ばれ、労働基準法第39条第5項に但し書として定められています。しかしながら、あくまで例外であり、使用者は合理的な理由のない時季変更権の行使は認められず、慎重な運用が求められます。

年次有給休暇の時季指定義務

冒頭でも触れましたが、使用者は有給付与日数が10日以上の従業員に対して、年5日の有休を取得させる義務があり、5日の取得をしていない従業員に対しては、時季を指定して有休を取得させなければいけません。これが「年次有給休暇の時期指定義務」と言われるもので、使用者は労働者の意見を聴取した上で、有給の取得時季を指定して取得させる必要があります。なお労働者が自ら取得した有給休暇や、労使協定で計画的に取得日を定めて一斉に取得をした有給休暇(計画年休)については、その日数を年5日の取得義務の日数から控除されます。例えば、既に2日の有給を取得している従業員の場合、使用者は3日分の時季指定をすることになります。

年次有給休暇を取得した際の給与計算について

年次有給休暇を取得した際の給与計算は、労働者にとって非常に重要なポイントです。基本的には、年次有給休暇中の給与は通常の労働日と同じ賃金が支払われるべきです。年次有給休暇の取得日の賃金計算は、労働基準法第39条第9項にて、以下の3つの方法が認められています。

①年次有給休暇の取得日も通常通り勤務したとみなす方法

②直近3ヵ月の平均賃金を求める方法 

③標準報酬日額から算出する方法

①有休の取得日も通常通り勤務したとみなす方法

通常の労働日に支払われる賃金と同額を支払う方法です。これは最も一般的な方法であり、労働者にとってもわかりやすいです。月給制や日給制の従業員であれば、年次有給休暇を取得した日を常通り出勤したものとみなして給与計算すればよいため、複雑な計算な通どをする必要ないです。

また、一定の所定労働時間で働く時給制のパートやアルバイトの従業員の場合も、所定労働時間分の労働をしたものとして所定労働時間×時給で有給休暇の計算が行います。

②直近3ヵ月の平均賃金を求める方法

この方法は、給与が歩合によって定められる場合や、日によって所定労働時間が異なる時給制の従業員に対して用いられることが多いです。

平均賃金の計算方法は労働基準法に定められており、原則として直近3ヵ月の 賃金の総額 を、その期間の暦日数で割って算出します。
ただし例外として、日給制や時間給制、歩合給の場合、出勤日数が少ないと暦日で算出をしてしまうと平均賃金が極端に安くなってしまいます。そのため労働基準法では最低保障額について規定があり、総額を労働日数で割った金額の6割に当たる額が原則の計算方法で算出した平均賃金より高い場合はその額を適用します。

具体的な計算について例を紹介します。











原則の計算方法で算出した額(4,131円)よりも例外の計算方法で算出した額(5,640円)が高いので、この場合の平均賃金は5,640円となります。

③標準報酬日額から算出する方法

この方法は、労働者の標準報酬日額を基に賃金を算出するものです。標準報酬日額とは、社会保険の報酬月額を基に算出される1日分の報酬額です。具体的には、標準報酬月額を30で割ることで求められます。この計算方法を選択する場合は、従業員との間に労使協定を締結したうえで就業規則に記載しなければなりません。また社会保険に加入していない従業員の場合は、正しい標準報酬月額を計算する必要があります。

どの方法を選ぶべきか?

有給休暇の賃金計算においては、適切な方法を選択し、労働者に対して不利益が生じないようにすることが求められます。しかしながら煩雑すぎる計算方法は未払い賃金の原因にもなるため、労務管理の面からはできるだけ簡略な方法を選ぶという視点も必要です。この両者のバランスが取れた方法を模索することはとても大変です。勤怠管理ツールなどを用いて従業員の働き方をしっかりと把握し、適切な方法を選択しましょう。また従業員に対して、どの方法が適用されるかを明確に伝えることも重要です。

退職時の年次有給休暇の消化について

退職時に残っている年次有給休暇をどのように扱うかは、従業員にとって非常に重要な問題です。一般的に、退職を希望する従業員は、残っている有給休暇を退職前に消化することを選ぶことが多いです。有給休暇の消化期間中は、通常の勤務と同様に給与が支払われるため、経済的な負担を軽減することができます。

会社側としても、退職時の有給消化は法律で定められた労働者の権利であるため、適切に対応する必要があります。具体的には、退職日を決定する際に残りの有給休暇日数を考慮し、退職日までのスケジュールを組むことが重要です。また、退職日が確定した後も、残った有給休暇の消化が可能かどうかを確認し、必要に応じて調整を行うことが求められます。

稀に、退職時に有給休暇を消化できない場合もあります。年次有給休暇の買い上げは原則として労働基準法で認められていませんが、退職日に消化しきれなかった有給休暇を買い上げることは適法となっています。買い取りを行う際には、通常の有給休暇の賃金計算方法に基づいて金額を算出し、退職時の最終給与と一緒に支払うことが一般的です。

間違っても引継ぎなどが行われていないといった理由で従業員側の有給取得を拒否をするといったことがないようにして下さい。従業員の年次有給休暇の取得を認めないと、次の項目で説明する罰則が科される恐れもあります。

そのため退職時には、労働者と会社の双方が納得できる形で年次有給休暇の消化や買い取りを行うことが重要です。労務管理ツールを活用し、従業員ごとの有給休暇の残日数を正確に把握することで、スムーズな退職手続きを実現しましょう。

以上のポイントを押さえることで、年次有給休暇の取得と給与計算に関するトラブルを未然に防ぎ、労働者の権利を尊重しつつ、会社の運営を円滑に進めることが可能です。

規定に違反した場合の罰則

6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金(労働基準法第119条1号)

従業員が有休取得の要件を満たしているにもかかわらず、有休取得を認めないといった行為は、労働基準法39条(ただし7項を除く)に違反しているとして、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。

30万円以下の罰金(労働基準法第120条1号)

年5日の有給取得を従業員にさせなかった場合、労働基準法39条7項に違反しているとして、また使用者による時季指定を行う際に、就業規則に記載していない場合は、労働基準法第89条に違反しているとして、どちらも30万円以下の罰金となります。

以上のように、年次有給休暇に関する規定違反には厳しい罰則が設けられており、企業はこれを回避するために適切な措置を講じる必要があります。労働者の権利を尊重し、法令に従った適切な年次有給休暇の管理・運用は、企業の信頼性を高めるだけでなく、法的リスクの回避にもつながるのです。

年次有給休暇の管理のポイント

①有給休暇が発生する基準日を従業員ごとに適切に把握する

入社日から半年がたった日を基準日として、従業員ごとに適切に把握しておかなければ、消滅時効も定まらず、出勤率の計算も正しくできません。そのため基準日の把握が管理の第一歩となります先ほど紹介をした付与日の統一は、消滅時効を社員で揃えることができるので管理が簡便になります。また勤怠管理ツールを利用するのも有効な対策の一つです。

②出勤率を正しく計算する

出勤率を正しく計算するためには、日々の勤怠管理における集計方法が適切でなければいけません。休日出勤が全労働日から除外されていない、有給休暇を実働日に含めていないといったことがないように注意しましょう。勤怠管理ツールを用いることで自動で出勤率を集計し、有給の付与を行うといった機能もあります。

③有給休暇ごとに付与日、取得日、消滅時効を把握し、残数を先入れ先出しで管理する

付与日に応じて、消滅時効は異なるため、取得した有給休暇がいつ付与され、時効はいつのものだったのか適切に把握し、本来であれば取得ができないはずの有給休暇を従業員が取得してしまったり、逆に取得できるはずの有休休暇の申請を誤って否認してしまうといった恐れがあります。また適切な取得日の管理ができていないと、消滅時効を迎えた段階での正しい残数が分からなくなってしまうといったこともあり得ます。

そのため適切な残数管理のためには、先入れ先出し方式で管理をする要があります。先入れ先出し方式とは、付与日が古い有給休暇から順に消化していく管理方法です。先入れ先出しで管理をすることで、従業員も無駄なく有効に有給休暇を取得のすることが可能です。また有給休暇の残数を明確に把握し、使用者は従業員に正確な取得状況を提供することができます。

年次有給休暇の管理ならGripper(グリッパー)にお任せ

クラウド勤怠管理システム「Gripper」(グリッパー)は、労務管理のプロが考えた勤怠管理システムです。基本的な年次有給休暇の管理の手助けとなる機能がGripper(グリッパー)には揃っています。

①従業員にあわせた有給管理が可能。出勤率も自動で集計します

Gripper(グリッパー)では雇用形態にあわせた複数の有給付与パターンの作成が可能です。パートタイマーには所定労働日数を登録しておくことで比例付与も適切に処理します。また従業員ごとに付与日を管理しており、自動で出勤率による有給付与の判定を行います。

出勤率の計算にあたっては、会社ごとに制定されている特別休暇を出勤日とするか、全労働日から除外するかといった設定もでき、また付与パターンの設定を変更することで基準日の統一も可能です。

②残数の先入れ先出しの管理

付与日ごとに消滅時効の管理をしているので、残数の先入れ先出しが可能です。そのため消滅時効が近い有給休暇から自動で取得していき、時効が過ぎた有給休暇は取得ができないようになっています。

③管理台帳による取得状況の確認

先入れ先出しの管理状況を適切に把握できるように、指定日時点での有給休暇の取得状況を管理台帳から確認することができ、取得が適切に行われていることを常に確認可能です。

まとめ

半日休暇や時間単位年休といった制度や、年5日の取得義務に対しての管理など年次有給休暇の管理において知っておかなければいけないことはまだありますが、今回は年次有給休暇管理の基本的な実務のポイントに絞って解説をしました。

本記事で解説した通り、年次有給休暇は労働者に保障されている権利であり、違反した場合には重い処罰を下される可能性があります

そのため、違反が生じてからでは遅く、事前前識を持つとともに、適切な管理体制を整える必要があります

「自分で管理するには不安がある…」
「ツールやサービスで自動管理して欲しい」

上記のようなお悩みは、クラウド勤怠管理システム「Gripper」(グリッパー)で解決できます。興味のある方はぜひお問い合わせください。

記事執筆
Gripperサポートデスク

記事監修
株式会社エスティワークス
特定社会保険労務士 神田晃二郎

https://www.st-works.com

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