勤怠管理コラム

休憩時間を正しく取れていますか? 労働基準法における休憩時間の必須知識とトラブル防止のコツ

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目次

労働基準法には休憩時間についての定めがあり、「長時間働いたから」「いつもこの時間に取っているから」と、何となく従業員に休憩を取らせていると知らず知らずのうちに法令違反となっていることもありえます。適切な休憩時間の確保は、仕事の効率を高め、労働者の疲労回復にもつながります。しかし、休憩時間についての労働基準法の知識や社内規定が不十分だと、労働環境に問題が生じる可能性があります。
本コラムでは、労働基準法に示されている休憩時間に関するルールと実務上のポイントについて解説します。休憩時間と労働基準法についての理解を深め、より良い職場作りに役立てましょう。

労働基準法における休憩時間とは

休憩時間と労働時間の違い

休憩時間と労働時間の違いを正しく理解することは、労働者の権利を守る上で欠かせません。まず労働時間とは、労働者が雇用者の指揮命令の下で作業を行う時間を指し、実際の業務時間だけでなく、指示待ちや準備時間も含まれます。一方で、休憩時間は労働者が自身の自由に使える時間であり、業務から完全に解放される必要があります。そのため休憩中に電話番や来客対応といった業務関連の行為を行うことは、たとえ短時間であっても許されません。この違いを明確にすることで、休憩時間が実質的に労働時間と化すことを防げます。

就業規則には休憩時間の記載が必要

休憩時間は、どの会社も絶対に記載しなければならない「絶対的必要記載事項」となっているため、始業・終業時刻などと一緒に就業規則に記載する必要があります。また従業員に労働条件を明示する際の労働条件通知書などにも休憩時間の記載があるか確認をしておきましょう。

休憩時間を付与する際の注意点

休憩時間の最低基準を遵守する

労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超える場合には最低1時間の休憩を取ることが義務付けられています。

労働基準法における休憩時間
労働時間が6時間を超える場合45分

労働時間が8時間を超える場合

1時間

もちろん法定以上の休憩時間を取ることは問題になりませんので、法令違反を防ぐのであれば、労働時間によらず1時間の休憩を取ってもらうことが確実です。
逆にこの基準が守られていない場合、法令違反となり、企業にとって大きなリスクをもたらします。そのためにも休憩時間は厳格な管理と適切な運用が必要です。

パートタイマーやアルバイトにも休憩時間は必要

パートタイマーやアルバイトにも休息時間は必要です。先ほど説明した休憩時間の最低基準は雇用形態に関わらず適用されます。パートタイマーやアルバイトは通常、フルタイムの労働者よりも短時間勤務であることから、休憩時間の管理が曖昧になりがちですが、勤務時間を正確に把握し、適切な休憩を付与する必要があります。

休憩時間の3原則を遵守する① ~自由利用の原則~

休憩時間は、労働者が完全に自由に利用できなければいけません休憩中は業務上の指示を受けたり、仕事関連の義務を果たす必要はありません。

もっとも、休憩時間の利用について事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を害しない限り差し支えないとされています。判例では、休憩時間の自由利用は労働者の権利として保障されていますが、企業内での行為については、企業秩序や他の労働者の権利を守るため、合理的な範囲での制限が許容されることが示されています。

しか労働者が自由に利用できることが大原則となるため、休憩時間中の行為に制限を設ける際は、専門家の意見を求めるなど、慎重に検討をするべきです。

自由利用の例外

以下の職業では、自由利用の原則の適用はありません(労働基準法施行規則第33条)。

  1. 警察官、消防吏員、常勤の消防団員准救急隊員及び児童自立支援施設に勤務する職員で、児童と起居をともにする者
  2. 乳児院、児童養護施設及び障害児入所施設に勤務する職員で、児童と起居をともにする者(ただし、労働基準監督署長の許可が要件)
  3. 児童福祉法第6条の3第11項に規定する居宅訪問型保育事業に使用される労働者のうち、家庭的保育者として保育を行う者(同一の居宅において、一の児童に対して複数の家庭的保育者が同時に保育を行う場合を除く。)

具体的には、警察官や消防士、保育や介護に携わる方となります。これらの職業は、業務の性質上、緊急対応が必要であったり、児童や利用者から目を離してはならないため、休憩を取る場所など休憩時間の自由利用に一定の制限が法的に認められています。
ただし休憩時間中の緊急対応などで休憩が取れなかった時間は労働時間となり、取れていない休憩は別で取る必要はあるのでご注意ください。

休憩時間の3原則を遵守する② ~途中付与の原則~

休憩時間は、労働時間の途中に設ける必要があります「途中」とは労働と労働の合間を意味し、始業前や終業後に休憩を与えることは認められません。これは従業員からの同意があったとしても同様です。

休憩時間の3原則を遵守する③ ~一斉休憩の原則~

休憩時間は全ての労働者が同時に休憩を取る必要がありますこの原則は、特に大規模な職場や工場のような環境で、労働条件の公平性を保つために設けられています。例えば12:00~13:00を昼休憩として、全従業員が休憩を取る会社が多いのは、このためです。

一斉休憩の例外

労使協定を定めることで一斉付与の適用をせず、交替制などを採用することが可能です。 例えばコールセンターや受付業務、工場の生産欄など一斉に従業員が休憩を取ることで業務に差し支えがでるような職場においては採用されることが多いです。

また以下の職業では、業務の性質上、従業員が休憩時間を一斉に取るのが困難であるとして、一斉休憩の適用はありません(労働基準法40条および労働基準法施行規則第31・32条)

  • 道路、鉄道、軌道、索道、船舶又は航空機による旅客又は貨物の運送の事業
  • 物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業
  • 金融、保険、媒介、周旋、集金、案内又は広告の事業
  • 映画の製作又は映写、演劇その他興行の事業
  • 郵便、信書便又は電気通信の事業
  • 病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業
  • 旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業
  • 官公署の事業

残業が発生した場合の労働時間に注意する

労働時間が6時間未満の場合は特に注意が必要

労働基準法では、労働時間が6時間ぴったりまでは休憩を付与する義務は発生しません。しかし6時間を1分でも超えた場合には、45分以上の休憩が必要です。

例えば、10時~16時で勤務としている場合は休憩時間は必要ありません。しかし終業間際に電話対応が長引いてしまい、終業が16時を過ぎてしまうと休憩が必要になってしまいます。従業員としても帰宅時刻が遅くなってしまうため、休憩を取らずに退社をしてしまうといったことがよくありますが、労働基準法に照らして考えた場合、厳密に言えば法令違反となってしまいます。

労働時間が6時間以上8時間未満の場合でも注意をする

労働時間が6時間以上8時間未満の場合は45分の休憩を取る必要があります。しかし上記と同様に残業をしたため労働時間が8時間を超した場合には、1時間の休憩が必要となります。この場合は、既に45分は休憩を取っているため、追加で15分の休憩を取れば問題ありません。

休憩に関するトラブルと回避のポイント

休憩時間が確保できない(忙しすぎて取れない)

何度も伝えているとおり、休憩時間は労働基準法の義務となっています。そのため「忙しい」「業務が回らない」ことを理由に休憩が取れないということは認められません。確実に全従業員が法定通りの休憩を取れるように、業務内容の分担をする、交代制を取り入れるといった工夫を検討してみてください。

休憩時間に業務を命じられる(手待ち時間と混同)

休憩時間は原則として労働者が自由に利用できなければいけません。そのため「休憩中でも電話対応を求められる」「急な呼び出しで実質休憩にならない」といった場合は、休憩時間も労働時間とみなされ、未払い賃金の原因ともなりえます。特に注意したいのは「手待ち時間」と呼ばれる、作業はしていないが業務の指示を待っている時間です。手待ち時間が「使用者の指揮命令下にある」場合は労働時間とみなされます。

 手待ち時間が労働時間とみなされるケース
  • 業務の都合上、拘束されており自由に行動できない場合
    例:レジ待機中のコンビニ店員、タクシー運転手の待機時間
  • 即座に業務が開始できる状態を求められる場合
    例:救急隊員の待機、ホテルのフロント係が客待ちする時間
  • 会社の指定する場所に待機させられている場合
    例:工場の作業員が機械の不具合対応のために待機

こうした休憩時間か労働時間なのか曖昧な時間を区別するためにも、休憩時間を明確にしておき、休憩時間中の業務対応は原則なしとして、どうしても対応が必要な場合は、その分の休憩を延長するといった運用で対応することが考えられます。

休憩時間が労働時間の途中に取れない

 休憩時間は労働時間の「途中」で取るのが原則です。そのため休憩時間を取ることができなかったから、その分の終業時刻を1時間早めて休憩を取ったことにはできません。終業時刻を早めたとしても、労働時間が6時間を超過していれば45分、8時間を超過していれば1時間の休憩は取る必要があります。また残業の結果、休憩が必要となった場合でも同様に法定通りの休憩は必要です。
最もわかりやすい対応策としては、労働時間によらず1時間の休憩を与えることを前提とすることです。時短勤務や半日勤務など労働時間が短い場合に例外的な対応は必要にはなりますが、残業時間などの影響を受けた休憩の取得漏れを防ぐことは可能です。
またまとまった時間での取得が難しいようであるならば、従業員と協議をし合理的な範囲で休憩を分割することも選択肢のひとつです。あくまで合理的な範囲ですので、判断に迷うような場合は、専門家に相談するようにしましょう。

 休憩中の外出を禁止する

「休憩時間に職場を離れるのは禁止と言われた」「休憩中も職場に待機しないといけない」と休憩中の従業員の行動を制限すると、自由利用の原則に違反していることとなり休憩時間と認められません。 ただし、業務の性質上、やむを得ない場合は一定の制限が認められますが、休憩時間の利用については、従業員に委ねるのが最良です。どうしても 休憩中の行動制限を設ける場合は、就業規則に明記し、労使による合意が必要となります。

休憩時間に関する労働基準法の罰則やその他のリスク

労働基準法において、休憩時間の適切な付与は使用者の義務とされています。これに違反した場合、以下の罰則が適用される可能性があります。

 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労働基準法119条)

使用者が労働基準法34条に違反し、法定の休憩時間を労働者に与えなかった場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

 行政指導・是正勧告

労働基準監督署が違反を確認した場合、まずは是正勧告や指導が行われます。従わなかった場合、企業名の公表や労働基準監督署による立件などの措置が取られる可能性があります。

3. 未払い賃金の支払い

休憩時間中に業務を命じた場合、実質的に労働時間とみなされ、未払い賃金や残業代の支払いが発生します。さらに、労働者から損害賠償請求を受ける可能性もあります。

休憩時間の管理ならGripper(グリッパー)にお任せ

クラウド勤怠管理システム「Gripper」(グリッパー)は、労務管理のプロが考えた勤怠管理システムです。休憩時間の管理の手助けとなる機能がGripper(グリッパー)には揃っています。

①休憩時間を複数の時刻で設定が可能です

Gripper(グリッパー)では休憩時間を複数に分けて設定することが可能です。例えば12:00~12:45で45分の休憩をとり、17:00~17:15を2回目の休憩として15分に設定をした場合、設定した時間が労働時間に含まれている場合、自動で休憩時間として集計をします。
また休憩を取る時刻が従業員によって異なる場合は、休憩時間を設定することで休憩を取った時刻によらず、設定した時間を休憩として自動で集計することも可能です。

②勤務日パターンは何個でも登録ができるので多様な働き方に対応可能です。

複数の勤務日パターンを登録できるので、従業員に応じた休憩の設定も可能となっています。また従業員のマイページから個別で休憩の開始と終了を打刻することも可能です。

まとめ

休憩時間の適切な運用は、労働者の健康維持や業務の効率向上に欠かせない要素です。労働基準法の規定を正しく理解し、適切に休憩を付与することで、従業員の満足度や職場の生産性向上にもつながります。また、休憩時間の管理を徹底することで、労使間のトラブルを未然に防ぐことが可能です。企業としては、法令を遵守しつつ、業務に支障が出ないよう柔軟な対応を検討し、働きやすい環境づくりを進めていきましょう。

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